zucca

Halloween Alice 本編

1 プロローグ

 あたしが初めて世界の成り立ちを知ったのは――七歳のとある昼下がり。ソファに座ってお気に入りのクッキーを次々と口に運びながら、母親から青鈍色の本を読み聞かせてもらったときだったっけ。

 さて……アリス、今日はこのお話を読んであげるわね。
 昔々、地上にまだ何もなかった頃……二人の神――天王と冥王が降り立ちました。神様たちは自分たちが住む天界と冥界を整えた後、その中間に生き物が生活できる豊かな土地を創造したのです。
 続いて、世界中をより良く・楽しく過ごせるように、私たち人間や動物を祖先とする魔族に対して、二つの制度を定めました。
 天王様が定めたのは、持っている魔力の多さを表す尺度、【階級】です。これにより、魔術を使うことが得意な者・苦手な者が分かるようになりました。
 階級はチェスの駒と同じで、キング・クイーン・ルーク・ビショップ・ナイト・ポーンの順に魔力が多いのよ。アリスは今、白のビショップだから……六つのうちの上から四番目ね。
「白って、なあに?」
 白はね、種族を表してるの。人間は白、魔族は黒を付けるって決まってるのよ。
「そうなんだ。あたし、覚えたわ!」
 さすが、アリスはお利口さんね。
 そして、冥王様が定めたのは……十歳の誕生日から発動するようになる体質、【呪い】です。このため皆が日々工夫しながら生活するようになり、世界中の技術の発展につながりました。
 呪いは確定型と制限型の二つに分けられて、内容も人それぞれ違うわ。アリスは七歳だから呪いはまだないけれど、未来の楽しみにしておいてね。
「確定型と、制限型?」
 これはね、呪いの内容が違うのよ。【~である】って表現されている呪いが確定型、【~でなければならない】って表現されている呪いが制限型なの。確定型はその体質を受け入れることしかできないけれど、制限型は呪いに逆らった行動もできるわ。ただし、後でペナルティを受けることになるから、どちらもほぼ決まった体質のようなものね。
「そっかぁ。あたし、どっちになるかしら……」
 ふふ。それは十歳の誕生日のお楽しみね。

 二つの制度とともに、私たちが過ごしている地上は今日まで続いているのです。そして神様たちは今でもこの制度を管理していて、しばしば地上にやってきては皆の様子を近くで見守っています。
 お母さんも一度神様たちを見かけたことがあるわ。運が良かったら、アリスもいつか会うことができるかもしれないわね。
「そーなのね……。楽しみ、だわ……」
 ちなみに、呪いを一時的に解除する方法で【契約】という制度もあるんだけど――あら? ……この子ったら、お腹いっぱいになって寝ちゃったのね。
 クッキー缶はもう空っぽだし、横に置いていたチョコまでほとんど食べちゃってる……全く、アリスは本当にお菓子が大好きね。
 じゃあ続きはまた夜に……おやすみなさい、アリス。良い夢を。

 その日の寝物語にページの先の話を聞いた時は、さっぱり理解できなくて。子供ながらに複雑な制度だわ、なんて他人事のように思っていたけれど。
 ……まさか、自分の人生に多大な影響を与えるものになるなんて。当時のあたしには、全く予測することができなかった。


 まずはアリスの回想からスタート。さてさて、これからどうなることやら……。