苺パフェとシュークリーム
1 レギナ視点・現在
夢うつつの最中、懐かしい記憶の海に――深く沈んでいた意識を持ち上げられるような心地を覚え、不意に目が覚めた。眠りの余韻でずしりとした重みを感じる両手に力を込め、上体を起こしたところで右の天蓋に手を伸ばす。ふわりと広がる深紅のレースの端を緩く手繰り寄せ、開いた先に広がるステンドグラスをぼんやりと眺めた。窓の向こうで水平線の下に隠れている太陽を視認し、まだ月光が淡く照らす城下を緩やかに見回す。
久方ぶりに、朝日が顔を出す前に目覚めてしまった。活動するには些か早い時間だがもう一度意識を手放す気にもなれず、指先を近づけて卓上のランプへ火を灯し、傍に据えられたロッキングチェアに腰掛ける。少しばかり穏やかな揺れに身を預けていると、物音を聞きつけたのか……隣の部屋に控えた侍従が静かに、かつ慌ただしく駆け寄ってきた。早朝に足を運んでもらったからと、流れで身支度を整えてもらい。彼女には礼を伝えて部屋で休むように促し、一人で玉座の間へゆるりと向かうことにした。
道中、何事かと集ってきた数名の衛兵には都度下がらせ、辿り着いた先の――誰もいない広間の中央で小さく呟いた。
「自分の心の中にやるべきことを定め、民のために為すべきことを」
玉座に腰を据える度、今でも記憶の中から呼び覚ます情景がある。
普段は体の弱かった先代――母の姿が、玉座にいるときはずっと大きく、頼もしく映っていたこと。
そして、女王としての作法を教えてもらう度に、何度も耳にしていた言葉。
レギナ。わらわたちは、持って生まれた立場を行使する責務があります。
けれど……わらわが言うからではなく、自分の心の中にやるべきことを定め、願わくば民のために為すべきことを成しなさい。
女王様と先代の思い出から始まります。