Halloween Alice 本編
7 ハートの女王
あの後、仕事場に戻った足でヴァーレントと意見を交わし……依頼の縁もあったことだしと、リーブレに連絡を取ってみることにした。一応こちらの事情をかいつまんで説明したうえで、もし可能であれば謁見をお願いしたいと伝えてみた。裁判長直々に口利きをしてもらうのは地位を利用しているようで少し気が引けるけど……こんな絶好の機会があるのなら、そうも言ってられないし。
ほどなく届いたリーブレからの返答は、女王様の予定次第とのことで。他の公務に左右されるかもしれないとの前置きがありつつ、ひとまず城の前で落ち合う日を決めた。その日時というのが、情報提供を受けた日から二週間後の――今日になる。
城門まで来たのは良いけれど、今日謁見できるかは正直分からない。豪奢な大門の隙間から城の景観を眺めながらこの後の展開を懸念していると、大通りの向こうから見知った相手がこちらへ走り寄ってきた。大きく手を振り、相手に居場所をアピールする。
「ああ、お久しぶりです、お二人とも……! 先日は本当にありがとうございました」
リーブレはあたしたちの前に到着すると深々と頭を下げ、相変わらずお手本のようなお辞儀をしてみせた。
「こんにちは、リーブレさん。ご無沙汰しております」
「リーブレ、久しぶり! 元気そうね」
「おかげさまで……! 無事に裁判も乗り越えられ、僕も何とか威厳を保てました」
嬉しそうに話す姿から、例の裁判が円滑に進んだことを感じ取り、ほっと胸を撫で下ろした。逸る気持ちを抑えつつ、こちらの用件を簡潔に伝える。
「この前話したけど、女王様が戻ってきたって聞いて……少しで良いからどうしてもお会いしたいの。何とかならないかしら?」
両手を顔の前で合わせ、頼み込むように深く頭を下げた。対するリーブレは遠慮がちに胸の前で手を振りながら、あたしに頭を上げるようしきりに勧めてくる。
「女王様はお忙しい方ですから、なかなかお時間をいただくことは難しかったのですが……お二人にはお世話になりましたし、僕の方で何とか調整させていただけました。先日の依頼の件もお話ししていますし、女王様もお二人に興味を持たれたようです」
「本当……!? ありがとう、リーブレ! 依頼の繋がりで、面倒なことお願いしちゃって悪かったわね……」
冒頭の重苦しい口調で話し始めた様子に、今回の交渉事の大変さが十分に伝わってきて。若干申し訳ない気持ちを抱きながらも、面会の場を橋渡ししてもらえたことに労いと感謝の気持ちを誠実に伝える。……あたしたちとの経緯も口添えてくれた辺り、きっと女王様の興味を引いて、面会の可能性を高めるよう働きかけてもらったってところよね。
「いえいえ……! これは前に依頼を受けていただいたことは全く関係なく……個人的な、僕の意思からです。呪いの影響で困った状況になるときの心細さは、僕だってよく分かりますから」
頬を掻きながらふわりと微笑む姿は、以前目にした気弱な性格を感じさせないほど――何だか頼もしく見えた。隣で鳴りを潜めていたパートナーも思うところがあったのか、相手に向かって一礼をした。
「リーブレさん、私からもお礼を。本当にありがとうございました」
「ああっ、ヴァーレンハイトさん……! そんな、お気になさらず……!!」
恐縮しながらヴァーレントよりも深くお辞儀を繰り返すリーブレを慌てて宥め込み……改めて、二度目の城内訪問に臨むこととなったのだった。
城の入り口から中央に広がるホールの奥へ通してもらいながら、この前とは別のルートを辿る。迷路のように複雑な道順を裁判長に付き従いつつ進み、様々な転送用魔法陣が並ぶ大部屋に到着した。転送用魔方陣は便利な反面……常時設置しなきゃいけないから場所もとるし、設置者の魔力消費も激しいのよね。学校や大型施設でしか見たことがなかったけど、これだけ多くの陣を設置している光景を目にするのは初めてだ。これも、女王様の城だからできることなのかもしれないわね。
仕事の参考にと視界に映る他の陣の図面を興味深く眺めながら……リーブレに案内されるがまま、赤色の魔方陣の上へ乗った。全員が立ち入ると瞬きをする間もなく、一瞬にして違う部屋へ移動する。赤のテーブルと四つの椅子が中央に配置された部屋は、前回通してもらった応接室よりも上の階に位置するようで……窓から見える庭園迷路の順路が、指で辿れるほどはっきりと確認することができた。
女王様はもう少しだけ公務の対応があるとのことで、この場で少し休憩をとることになった。席に着いてから少しして……リーブレがふと思い出したかのように、あたしたちの顔をじっと見つめてきた。
「僕から一つ、ご助言です……。女王様は基本的に女性の方にはお優しいですが、非常に厳粛なお方です。ヴァーレンハイトさんは大丈夫だと思いますが……特に男性の方は、振る舞いに十分お気をつけくださいね」
神妙な面持ちで話すリーブレに、顔を知らない要人との面会に不安な気持ちがじわりと脳裏を掠める。……だけど、ここまで来たんだから覚悟しないといけないわね。気を引き締めるように、前に座っているパートナーへ一応釘を刺しておくことにした。
「ヴァーレント。あんたは大丈夫だと思うけど、失礼のないようにね」
「ええ、それは勿論。善処いたします」
こんな状況下でも密かに楽しげな様子で――落ち着いて微笑を浮かべている姿を見ていたら、何となく上手くいきそうな気がしてきて。
肩の力を抜くように、ふう、と大きく息を吐き出した。
* * * * *
リーブレに促され、今度は白色の転送用魔方陣で移動したあと。来訪者を静かに牽制するような装飾の白い門をくぐり抜けていく。この先が謁見の間へ続く回廊らしく……教科書で目にしたことのある調度品がそこかしこに配置されていて、まるで身体ごと本の世界に入り込んだみたいだった。
真っ直ぐ進んだ先の壁沿いには、あと少しで天井に届きそうなほどの大きな赤い扉が構えられていて。先導していた裁判長はここで足を止め、緊張に身を震わせながらこちらに向き直った。
「この広間に……女王様がいらっしゃいます。さあ、どうぞお入りください」
彼の言葉を待っていたかのように、タイミング良く扉が奥へ開いていく。開け放たれた扉の動きが静まるのを待ち、リーブレの後に続いて慎重に足を踏み入れた。
円形にくり貫かれたようなホールは両脇に白く大きな柱が立ち並び、床は赤と黒の菱形の大理石が交互に敷かれた艶やかな景色が視界の端々まで広がっていた。随所に金の装飾がふんだんに使われている辺り、流石謁見の間といった装いだ。
ホール中央に横並びで据えられた二つの椅子に、顔を少し伏せて座るようリーブレから声をかけられる。指示を受けたとおりに振る舞いながら、確認でき得る範囲を目だけで探り見た。
ホール正面には十段ほど刻まれた階段があり、その頂点に据えられた大きな椅子に座した人影がこちらを真っすぐに見下ろしているようだった。リーブレはあたしたちを案内したあと、女王様の横に着いたようで――金色に光る椅子の足の傍に、先ほどまで行動をともにしていた白い革靴がちらりと見えた。
静寂が支配する空間に、弓を勢いよく引いたような――よく通る声が響き渡った。
「……客人と相対するのは久々じゃのう。おぬしたち、顔を上げよ」
許可をいただいたこともあり、ゆっくりと顔を正面へ戻していく。
「わらわの名は、レギナ・キュオレ。……留守中、リーブレが世話になったと聞いておる。その節は感謝しておるぞ」
最初に目に入ったのは――鮮やかな深紅のドレスと、ジャックオーランタンを模した、王たる証の眩い冠。右側に結い上げて縦一方向へ巻かれた金の髪は、手入れが行き届いているためか室内でも太陽の光のようにキラキラと輝いていた。深い海を思わせる蒼の眼差しは凛としていて……流石共存地域を統べる方だ、と素直に思うほどの気迫と佇まいを感じさせられた。あたしより二歳ほど上の年齢だと聞いていたけど、責任ある地位がそうさせているのか――もっと大人びて見える。
そういえば……女王様の階級って、白のキングだったっけ。同格の者が普段隣にいるわけだけど……やっぱり最上位を冠する者たちは、こうも威厳やオーラを兼ね備えているものなのかしら。
「折角の機会じゃ。わらわより、ささやかな礼でもしよう……何か、望むものはあるか?」
女王様直々の申し出に全身から喜びが溢れそうになる気持ちを何とか抑え、脳内で少し考えを巡らせる。裁判長からの助言を思い返し、失礼のないよう言葉を選びながら口に出すことにした。
「それでは……知りたい情報があります。少し、お話の場をいただければ嬉しいです」
女王様はあたしの顔を眺めながら、意外とでも言うような口調で言葉を発した。
「ふむ。そのようなことで良いのか? 構わぬぞ、早速手配しよう……リーブレよ、茶会の用意を任せる」
「か、かしこまりました……!」
勅命を受けたリーブレは、急ぎ足ですぐさま部屋を駆け出していった。残された部屋の中で王座にゆったりと坐した主は、少し考える素振りを見せる。
「女子の語らいに男の姿は無粋じゃろうて……ヴァーレンハイトよ、お主は退室して暫し待っておれ。……さて、アリスよ。紅茶や甘味でも食しながら話をしようではないか」
女王様直々のお誘いということは――城内の趣向を凝らしたお菓子が食べられるってことだ。こんな機会なんて滅多にないし、嬉しくて仕方ない提案なんだけど……。
隣で表面上は変わらない笑みを浮かべている青年の顔が、ただただ憎らしい。こいつ……間違いなくあたしの反応を見て楽しんでるわ、絶対そうよ。
内心恨み節を呟きながら……できる限り粛々と、こちらの意向を伝えることにした。
「……申し訳ありません、女王様。お気持ちは大変嬉しいのですが……あたし、契約のせいで、この男がいないとお菓子が食べられないんです」
その言葉を待っていたかのように、パートナーは優雅に一礼をした。女王がちらりと一瞥を向ける。階級キング同士の涼やかな睨み合いが暫し続いた後。ふう、と女王様が息を吐いた。
「……特例じゃ。感謝するのじゃな」
* * * * *
駆け足で戻ってきたリーブレの案内に続いて、ひとまず謁見の間を退室したあと。回廊の途中に構えられた緑色の扉を抜け、また新たな部屋へ通された。薔薇の花やトランプを象ったステンドグラスが壁のあちこちを品良く彩る中……数十人が向かい合って座れそうなほどの長方形のテーブルと、それをサポートする沢山の椅子が一直線にずらりと並んでいる。ここは会食を行うときの部屋らしく、奥に備え付けられた厨房から料理長が腕を振るった珠玉の作品が振る舞われるとのことだった。これから提供されるスイーツの味を想像すると、当初の目的そっちのけでこの場が俄然楽しみになってきた。
長いテーブルの横を抜けた先に、これまた大きな白色の円形テーブルと赤の椅子が佇んでいた。ティータイムの準備も既に万全のようで、卓上にはティーコジーにすっぽりと覆われたポットや、ケーキやクッキーが盛り沢山に乗せられたスイーツテーブルが整然と並んでいる。
女王様を案内するために一旦部屋を出ていったリーブレの帰りを待ちながら、この後の対話の行く末に思いを馳せた。
少しでも、何か手がかりが見つかれば良いんだけど……。
程なくして、女王様が静々と席に着かれた。間近で見ても圧倒的な存在感に、つい目を奪われてしまう。あたしから注がれる視線に気づいたのか――正面に座った女王様はこちらに向かって口元をわずかに緩め、優しげな表情を見せた。
「アリスよ。そんなに気負うな、とは難しいじゃろうが……ここはもてなしの場。折角なのじゃ、楽しんでおくれ」
「あ、ありがとうございます……」
結局案内を終えたリーブレも、女王様に着座するよう命じられ。広い室内で、四人だけの盛大なティーパーティが開催されることになった。
本来だったらあたしももう少し恐縮してるはずなんだけど、流石に左隣の様子をちらりと窺い見れば落ち着くもので。畏まりすぎて小刻みに震えるリーブレの姿が、何だか獲物として狙われているウサギに似ていて、申し訳ないやらありがたく感じるやら。心の中で同情しつつも、目の前のお菓子を思う存分楽しむことにした。
やっぱり予想通り……いや、それ以上……。何もかもが、めちゃくちゃ美味しい。そりゃ、普段食べているヴァーレントお手製のスイーツだって勿論美味しいんだけど、女王様が召し上がるものとあって、素材からして違うのかもしれないわね。
スフレ生地のチーズケーキはフォークの上で跳ねるように踊り、ふわふわを通り越して口の中に入れたらすぐに溶けて消えた、という表現がぴったりで。珍しい食感とあまりの美味しさに頬が緩む。上部がきつね色に染まったプリンの表面に銀のスプーンをそっと差し込むと、琥珀色のカラメルソースがじわりと染み出してきた。弾む黄色の層をうっとりと眺めながら、口に運び入れる。バニラの芳香が程よく香る滑らかな舌触りとソースのほろ苦い味わい……二つのハーモニーが相まって、かなりの絶品だった。
こちらの境遇を話し終えて一段落したこともあり。目を輝かせながらテーブルに並ぶ品物を順番に味わっていると、あたしたちの話に耳を傾けていた女王様が威厳を感じさせる声音で言葉を発した。
「お主たちの境遇は分かった。……ヴァーレンハイトよ。お主の目的は何じゃ?」
ヴァーレントを見据える瞳には剣呑な色が宿り、警戒心を露にしているのがはっきりと伝わってくる。
「目的、ですか?……さて、何のことでしょう?」
「とぼけるでない。わらわは様々な者と対する場を持ち合わせておるが……お主のような掴みどころのない奴は、大抵裏に何かを隠し持っておる。まさか、良からぬことを考えておるのではなかろうな……?」
詰問のような語気で問いかけられたパートナーは、カップを口に運ぶ手をぴたりと止める。あたしもつられてフォークを動かす手を止め、二人の動向を固唾を吞んで見守った。
「……ご心配なく。アリスにはこちらの意向を伝えたうえで行動をともにしています。協力することはあっても、危害を加えるようなつもりは全くありませんよ」
女王様の突き刺すような視線にも臆することなく、パートナーはいつものように微笑を浮かべながらきっぱりと答えていた。心なしか二人を取り巻く周囲の温度が下がり、交わした視線が青白い火花となって弾けているように見えてくる。不穏な空気を察知したリーブレは落ち着きなく二人の顔色をうかがいながらびくびくと身を震わせていて、そう縮こまりたくなる心境が痛いほどよく分かった。
女王様はヴァーレントのことを吟味するように暫く睨み付けたあと……不意に視線を外し、優雅な所作で紅茶を一口含んだ。
「……成る程。害意はないようじゃな」
向き直った姿には、先ほどまで浮かべていたような厳しい色はほとんど残っておらず。穏やかな声音でヴァーレントに話しかけていた。
「試すようなことをして悪かったのう。わらわには地域の統治を担う責務がある。怪しげな者には先ず探りを入れておかねば気が済まぬのでな」
「いえ、お気になさらず、魔族は風変わりな者が多いこと、私自身もよく分かっておりますので」
「やはり聞いていた通り、面白い男じゃのう。……あまりパートナーに迷惑かけるでないぞ?」
「それは勿論。心得ております」
呆気にとられるあたしとリーブレを置いてきぼりに、先ほどまで鬼気迫る空気感を生み出していた張本人たちが談話する光景が目の前に広がる。女王様は満足げに一息吐いたあと、あたしの方へ視線を向けた。
「さて……そろそろアリスの望みに答えねばな」
急に名前を口に出され、どきりと心臓が跳ねる。今までだって貴族や大富豪から持ち込まれた依頼を受けたことはあるけど、こういった方の対応ってのは、やっぱり身が引き締まる思いになる。ましてや自分が住んでる地域の最高権力者と机を囲んで向かい合っているなんて、小心者なら卒倒ものだ。
「こやつとの有効距離に苦しめられておるとは……何とも不憫じゃのう」
お菓子の美味しさに追いやられてすっかり忘れかけていた話題を振られ、当初の目的を急いで脳裏に呼びおこした。ああ、そうだった……本題を進めないと。
「そうなんです。そこで、有効距離を伸ばす方法を探しているのですが……何か、ご存じではないでしょうか?」
女王様はフォークの切っ先を白桃のタルトに刺し込みながら、ぽつりと呟いた。
「青虫……なら知っておるかもしれぬ」
「青虫、ですか?」
口から飛び出した聞き慣れない名称に首を傾げると、あたしの様子をじっと眺めていた城の主は言葉を続けた。
「青虫というのは通称じゃ。いわゆる本の虫とでも言おうか……趣味が高じて自宅に図書館を構えた奴のことでな」
「名前は確か……アーズル、でしたね」
右隣に座るパートナーから意外な言葉が返ってきたことに、目を丸くして思わず問いかける。
「ヴァーレント、知ってたの?」
「話には聞いたことがあります。辺境に住む読書家だと。しかし、彼は長らく図書館を閉鎖していたはずですが……」
「それは――十年ほど前の話ですね。最近はオーヴォ君もすっかり大きくなりましたし、今は再開していますよ。僕も時々本を借りに行っています」
まさか左隣からも、新たな情報が飛び込んでくるとは。どうやらリーブレも近況を知っているみたいだし、これは有力な情報みたい。
「これは……図書館へ行く価値がありそうね」
意向を探るように、ヴァーレントへ視線を送った。カップをテーブルに戻しながら相槌を打つ姿が目に入り、あたしも同じく首を縦に振った。
「賛成です。有力な手掛かりが見つかることを期待しましょう」
お菓子を乗せた皿たちが、描かれた模様を少しずつ表面に見せ始めたころ……女王様が思い悩むような表情でぽつりと言葉を発した。
「わらわとて、アリスと契約を結ぶことは可能じゃが……立場上、当面考えておらぬのでな。力になれず口惜しいのう」
「いえ……! お気持ちだけでも、とても嬉しいです!」
そっか、あまりにも畏れ多くて思い付きすらしなかったけど……階級的には女王様と契約を結ぶことも出来るのね。仮に……もし実現するとなったら、毎日リーブレみたいに身を縮めていそうな自信がある。
女王様の名残惜しそうな様子にあたしを労る気持ちは十分に伝わってきたので、感謝の意を誠心誠意伝えることにした。こちらの様子を眺めながら優雅に微笑む女王様は、王座で対面していた時と比べて少しだけ――柔らかな表情を浮かべているように感じられた。
「まあ、全てが落ち着いたらまた来るがよい。歓迎するぞ」
公務に戻るため女王様が退室された後。あたしたちを門まで送り届ける役目を仰せつかったリーブレは、至極嬉しそうな足取りで来た道を案内してくれた。
「女王様は……城の者以外と接する機会が滅多にありません。お二人のことを随分とお気に召されていたようですし、また機会がありましたら是非お越しください!」
「ありがとう。こちらこそ、その時は宜しくね」
次の機会があるとしたら、また至高のスイーツを口にする機会があるってことで。待ち受けるお菓子のラインナップを頭に思い浮かべながら、緩む口角を両手で隠しつつ裁判長に付いていく。あたしの所作を一部始終見ていたのか、後ろに控えたパートナーが軽い笑みを漏らした声がかすかに聞こえてきて。さっと振り向いて、じろりと睨みつけることにした。
金色の正門の前で裁判長と別れの挨拶を交わし、お礼もそこそこに帰路を辿る足を進めながらパートナーに話しかける。
「ひとまず、次の目的地が決まったわね」
「図書館、ですね」
目配せで合図を取り合った後。耳にした情報をもとに、早速次の目的地へ向かう手筈を整えることにした。
階級キング同士の静かな応酬、一緒に居合わせたくない場面トップ3に入ると思います。